あなたは車のメンテナンスをするとき、どこに気を使っていますでしょうか。
私が友人などに質問をすると、エンジンオイルやタイヤ、バッテリーなどには気を使っている人は非常に多いのですが、オートマチックミッションなどの駆動系の部分にまで、気を配っている人は非常に少ないように感じます。
しかしこの駆動系の部分は、車を走らせるのにとても重要な部分であり、エンジンオイルやバッテリーと同様に、しっかりとメンテナンスをする必要があります。
それなのに何故、エンジンオイルやバッテリーには気を使う方が多い一方、オートマチックミッションなどの駆動系に気を配っている人は非常に少ないのでしょうか。
私なりに考えてみた結果ですが、ディーラーや整備工場、ガソリンスタンドなどでは、エンジンオイルやタイヤ、バッテリーの重要性を多くうたっているにも関わらず、オートマチックミッションなどの駆動部分に関しては、その重要性をユーザーにそこまで伝えておらず、一般知識として広まってないのではないかと思いました。
その結果、オートマチックミッションのことをあまり知らない人も多く、ましてやミッションのオイル交換を定期的にやらなくてはいけないということも、知らない人が多くいるのだと思います。
そこでこちらのページでは、車のとても大事な駆動部分、オートマチックミッションのオイル交換の時期について、お話していきたいと思います。
オートマチックミッションオイルとは、正式名称でATF(Automatic Transmission Fluid オートマチックトランスミッションフルード)といい、オートマチックミッションを動かす上で欠かせない潤滑オイルのことを言います。
オートマチックミッションを動かすには、必ずこの専用オイル「ATF」が必要であり、エンジンオイルとは全くの別物のオイルになります。(以下ATオイルと呼びます)
オートマチックミッションの内部は、このATオイルに満たされていることで動力伝達を可能にし、車速に対して適切なギアへシフトチェンジすることができるようになり、スムーズな加速、車速を保つことができるようになります。
しかし、このATオイルの交換を怠ってしまうと、車には様々な負担がかかり、そのまま放っておくと最終的にはミッションが故障し、高額な修理費用がかかることになります。
もし、オートマチックミッションが故障してしまった場合、内部の部品だけの交換で済めば、そこまで高額な修理費用がかかることはありませんが、ミッションを新品に載せかえたり、リビルド品を使って修理した場合でも、だいたい30万円~50万円程度の修理費用が必要になります。
そうならないためにも、以下のような症状が出てきたら、出来るだけ早めにATオイルの交換をすることをお勧めします。
●ATミッションの不調のサイン
シフトチェンジをするときにショックが大きくなってきた
シフトチェンジをするときに滑るようになってきた(オートマ滑りとも言う)
どうも最近燃費が悪くなった感じがする
●ATオイルの主な交換時期は、以下の基準が目安になります。
距離:2万km毎
期間:2年以内
※2年以内に2万キロ以上乗る人は、距離で交換時期を判断し、あまり車に乗らない人は、車検時に毎回交換するようにするのがベストです。
シフトアップ時の振動が大きくなったり、オートマ滑りになる原因は、主にミッションの無理な切替が影響します。
普通に走っていれば、ミッションに負担を掛けることはほとんどありませんが、急加速や急停止などの荒い運転をしていると、ミッションの無理な切替が発生し、ミッション自体に大きな負担を掛けることになります。
そうなると、ミッションにかかる負荷が大きくなり、故障の原因に繋がっていきますので、出来るだけ車に優しい運転を心掛けることが大切です。
ここまでATオイルをエンジンオイル同様に定期的に交換する重要性をお話してきましたが、エンジンオイルとは違い、ATオイルは、ただオイル交換をすればよいというものではありません。
ATオイルは交換する上で一つ気を付けなくてはならない点があります。それは、ATオイルを長い間交換していなかった車は、新しいオイルに入れ替えたことにより、不具合が出てしまうことがあるからです。
よく、ATオイル交換で「10万キロを越えた車はATオイルの交換はできません」、「交換せずにそのまま乗っていた方がいいですよ」と、カー用品店やガソリンスタンドなどでは断られることが多いと思います。
その理由は、長い間ATオイルを交換していなかった車が新しいオイルに交換すると、返って症状が悪化したり、故障の原因に繋がることがあるからです。万が一、ATオイルを交換したのち、後々その車が故障し、クレームなどになったら大変です。
カー用品店やガソリンスタンドでは、オートマッチクミッションの修理がとても高額になるということを知っていますから、故障した場合のリスクを回避するために作業を断っているのです。
オートマチックミッションは、とても繊細な精密機械で、内部は密閉されている構造になっています。
そのため、ATオイルはエンジンオイルとは違い、一度に全交換することができません。ATオイルは一度交換しただけでは、古いオイルを完全に抜くことができず、ほとんどの場合、古いオイル50%と新しいオイル50%で混ざる形になります。
ATオイルの交換方法としては、「循環交換方式」と「下抜き交換方式」の2つのやり方がありますが、どちらの方法でも古いオイルを完全に抜くことはできない構造になっています。
●ATオイルの循環交換方式
循環交換方式では、ATオイルを交換するための専用機器を使って交換していきます。(上記写真参照)
まず、ATFの量を測るレベルゲージの部分にホースを入れます。そして、油量の設定をしてボタンを押すと、後は機械が自動的にATオイルの交換をしてくれます。
どのような工程が行われているかと言うと、古いオイルを一定量抜いたら、新しいオイルを一定量入れる、この工程を何度も繰り返し、ATオイルを新しい物に交換していきます。
通常ですと、3回程度繰り返せばATオイル交換完了となります。私が中古車販売店やガソリンスタンドに勤めていたときは、どちらもこの循環交換方式でATオイルを交換していました。
●ATオイルの下抜き交換方式
下抜き交換とは上記画像のように、オートマチックミッションのオイルパンからそのままオイルを抜く方法です。エンジンオイルを交換するのと同じやり方です。
ですが私は、ATオイルを下から抜いている業者はあまり見たことがありません。ほとんどが、上記の循環交換方式を使っていると思います。
しかし、どちらの交換方法を用いても、全てのATオイルを完全に抜くことは物理的に難しいです。
私は以前、循環交換方式の時に使う専用機器を販売しているメーカーの営業マンと一度話したことがあるのですが、完全に新しいATオイルに入れ替えるには、循環交換方式でも下抜き交換でも、数キロ走行した後、再びATオイルを交換する必要があると言われました。
つまり、フラッシング(機械内部のスラッジ等を取り除く作業)を何度も繰り返し、この作業を最低でも3回、きっちりやるのであれば、5回は繰り返さないと、完全に新しいATオイルに入れ替えることは難しいと教えてくれました。
とても手間のかかるやり方ではありますが、このやり方で交換をしないと、ATオイルを完全に交換したとは言えません。
しかし、しっかりとATオイルを交換すれば、交換時の故障となる原因のトラブルを回避することが可能になってきます。
ATオイル交換をして不具合が出る原因は、ミッション内に溜まっている鉄粉とスラッジによるものです。
オートマチックミッションの油圧回路にはスラッジ(金属の粉)という物がへばりついていて、新油を入れることによって、内部の洗浄性が上がり、その塊が徐々に剥がれ落ちていきます。
そうなると、血栓のように回路を詰まらせる可能性が高くなり、汚れがひどいオイルだった場合、ATオイルを交換しても内部の汚れは除去しきれないため、除去しきれなかった金属粉がミッションを痛めて故障に繋がってしまうのです。
つまり、ATオイル交換したことによって取れた汚れが、オイルラインに詰まり、オートマチックミッションの不調に繋がるということです。
不調の原因は、滑ることもあるでしょうし、変速ショックが大きくなったり、ギヤ自体が壊れることもあります。
ですので、非常に手間のかかるやり方ではありますが、ATオイル交換をする場合、何度も何度も、新油を入れたり抜いたりして、このAT内部のスラッジを完全に取り除かなくてはならないのです。
ですが、この方法は非常に手間がかかるので、一般の整備工場やディーラーではまず受けてくれません。通常のATオイル交換としてやってくれるのは、1度だけ新油に入れ替える形のオイル交換となります。
ですが、そのやり方ですと古い油があまりに汚れていた場合、新しい油と上手く馴染まず、ギアのかみ合わせに支障をきたし、変速の振動が大きくなったり、オートマ滑りに繋がり、最悪ミッション自体がダメになってしまうこともあります。
このような理由から、ATオイルを一度も交換していない車は交換しないでそのまま乗り続けた方がまだいいと言われるのです。
もし、しっかりとATオイルの交換をして車を長く乗り続けたいという方は、正しいATオイルの交換方法で整備して欲しい、と整備工場に相談してみることです。時間と費用がかかってもいいのなら、と受け入れてくれるところは必ずあると思います。
また、これは私がガソリンスタンドでアルバイトをしているとき、実際に経験したことですが、ある国産車に乗っているお客様から変速の振動が大きくて困っていると相談を受け、ATオイルを交換することになりました。
そして、ATオイルを交換してしばらくすると、車が故障したとクレームが入ったのです。そのお客様は既にディーラーに車を出しており、ディーラーがミッションが壊れた原因は、ATオイルを交換したことによるものだと言っているというのです。
私もその頃はあまり車に関する知識が少なかったため、お客様の為をと思ってやったことが返って逆効果になってしまい、結果、ミッションを載せかえることになってしまったのです。
この原因も、このお客様の車は10万キロを超えており、一度もATオイルを交換したことがなかったため、古いオイルと新しいオイルを入れ替えたことにより、ミッション内部のスラッジなどがオイルラインに詰まり、ギアのかみ合わせが上手く回らず、故障してしまったものだと思います。
このようなことは実際私だけでなく、私の友人である現役の整備士達も同じ経験をしたことがあると話してくれていますので、もしあなたの車が長年ATオイルを交換していないのだとしたら、信頼のおける整備工場などによく相談してから交換することをお勧めします。
ここまで、オートマッチクミッション(トルクコンバーター式)のATオイル交換についてお話してきましたが、オートマチックミッションにも、実は種類があります。
大きく分けると、今までお話したオートマチックミッション(トルクコンバーター式)、次に最近小型車などに多く搭載されるようになったCVT(無段変速式のオートマチックトランスミッション)があります。
このCVTのATF交換方法も基本、オートマッチクミッションとやり方は同じですが、気を付けないといけない点があります。
それは、オートマチックミッションとCVTでは、同じATFでもオイルの種類が全く異なり、オートマチックミッションには「ATF」、CVTには「CVT専用オイル」で交換しなくてはなりません。
なぜ、このようなお話をするかというと、知識が少ないスタンド店員やカー用品店の店員さんですと、このことを知らない店員が多く、CVT車にATオイルを入れてしまい、あっさりと故障させてしまうことがよくあるからです。
逆に、オートマッチクミッション車にCVTオイルを入れても走行不能になり、あっさりと故障してしまいます。最近は少なくなったとは思いますが、実際に現場でこのようなことは頻繁に起きています。
ですので、このことをあなたにはしっかりと知っていただき、自分の愛車がオートマチックミッション搭載車なのか、CVT搭載車なのかを把握してもらい、つまらない故障を防いでもらえればと思い、お伝えさせていただきました。
ここまでATオイルのことや交換時期について色々とお話してきましたが、あなたのお役に立ちましたでしょうか。もし、少しでもあなたのお役に立てたのであれば、とても嬉しく思います。
冒頭でもお話しましたが、オートマッチクミッションが壊れてしまうと、とても高額な修理費用がかかってしまいます。
そうならないために、今までATオイルのことについて詳しくお話してきましたが、もしこちらのページをご覧頂いている方で、既に愛車のオートマッチクミッションやCVTが故障をしてしまい、このページに辿り着いた方もいると思います。
何度も言いますが、オートマッチクミッションの修理費用は高額です。修理費用の相場としては30万円~50万円、車種によっては50万円を超える場合もあります。
こうなると、「もう愛車を乗り換えるか」、「それとも高額な修理費用を支払い乗り続けるか」、このような選択で悩まれる方が多いと思います。
今の車に愛着があるのであれば、修理してでも乗り続けることが良いかと思いますが、丁度良いきっかけがだからと、乗換えを検討している人は、新しい愛車を探すのも選択肢の一つだと思います。
ですが、車を乗り換えるにしても、壊れている車ではなかなか値が付かないのではないかと、心配されている方もいると思います。
もしあなたが、車を乗り換えようと検討していて、壊れている車では値が付かないのではないかと思っているのであれば、まずは一度「車の一括査定サイト」に打診してみることをお勧めします。
この一括査定サイトを利用すれば、現状のあなたの車の買取相場がすぐに分かります。またその中で、一番高く買い取ってくれる業者もその場ですぐに分かります。
やり方は簡単で、あなたの車の車種、年式、走行距離、色、現在の車の状況など、簡単な必要項目を入力するだけで、おおよその概算の見積り金額が数分で届きます。
その届いた金額を見て、車を乗り換えるか、修理して乗り続けるか、判断されるのが良いかと思います。
しかもこちらのサービスは「無料」で利用することができますので、まずは一度、この一括査定サイトに査定依頼を申し込み、今後どうするかの判断基準の一つとして、利用してみることをお勧め致します。
ATFって何?交換時期はいつ?
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